まゆびらき日記

虚実ないまぜの日記と小説。

短編小説『茶筒の底』

おばあちゃんの茶筒には、女の子が住んでいる。 見せてもらったのは一度だけだったけれど、鮮明に記憶に焼き付いていた。 深い茶色に、藤の花が垂れ落ちる図柄の茶筒だった。おばあちゃんちの居間の飾り棚に鎮座するそれは、ガラス扉の内側の一番目立つとこ…

近況と最近の考え事

台風が日本列島を縦断中。数日前からいろんなものが重なって体調が悪く、仕事以外はほとんど床と並行になって過ごしている。台風による強烈な低気圧もそのひとつなんじゃないかと疑っている。 今日は午後からやっと起き上がれるようになって、成り行きで保護…

実家に帰らない夏に思い出す、うどんとぼたもち

昨年末に「帰省したくないよ〜〜〜」とごねていたら、弟が「姉ちゃんもう帰らなくて良いよ。俺が適当にやっとくからさ」と言ってくれたので、ご厚意に甘えまくって今年のお盆は帰省していない。あまりにも快適。パートナーと猫たちと一緒に好き放題している…

怖い話が好きだった

小学生三年生の頃、怖い話の本が読みたくて塾に通っていた。塾には「学校の怪談」シリーズが、学校に置いていないものも含めて全巻置いてあって、行くたびに新しいものを借りて帰ったのをよく覚えている。 学校の怪談シリーズ(ポプラ社) https://www.popla…

うつくしい歌の記憶と、意志を持つこと

高架をくぐると花の匂いがした。どうやら近くの家の薔薇がここまで薫ってきたらしい。脳内に音楽がひらめく。見渡す限りの前方には人がいない。後ろからも足音は聞こえない。香りを吸い込んで、口を開く。 童は見たり 野中のばら 清らに咲ける その色愛でつ …

創作占いの水煮さんに鑑定してもらいましたレポ

フォロワーさんもいいよ!って言ってたし、創作については常々悩みが尽きないので、創作占いの水煮さんに見てもらいました!半年以上抽選にトライし続けて、ようやくの当選。めちゃめちゃ楽しみにして当日に臨みました。逐語というよりは、簡易メモ的なレベ…

溜め込むばかりだと具合が悪い

私は本当にしんどい時、あんなに好きなはずのノートにすら向かえなくなるという癖がある。完全に頭がヒートアップしていて、同じことをぐるぐると考えている。この春はその傾向が顕著だったので、いかんいかん、手放さないと、と思ってあれこれやってみた。 …

はずれものとして生きる

何代さかのぼっても、おそらく農家である。 実家は兼業農家をしている。母方も父方も、祖父母は農家で祖父母も農家の出だ。 実家の近所には「本家」とされる家があるが、そこも農家である。本家といっても特別広いわけでもお金持ちなわけでもない。敬われて…

初夏、私の大好きな季節。

生まれたのがこの時期だからえこひいきしている、というのはきっとある。でも、私は初夏のこの時期がとても好きだ。日差しは生命力に溢れ、葉桜が青々とする。七分袖で出かけると少し寒いけれど、ひなたを歩けばちょうどいいくらい。春の間中悩まされる花粉…

書いて気持ちを整理する難しさ

長いこと気持ちを書き出してスッキリするという手法をやってきたのだけれど、最近うまくいかなさを感じている。 ノートや日記帳に書き出すのは、ちょっとだけパワーが要る。一度習慣が途切れてしまうと手帳を開くことすら億劫になる。それをやっていたほうが…

インスタントコーヒーを目分量で。

インスタントコーヒーをマグカップの底にからから落としながら、思い出す光景がある。 新卒で入社した会社でのことだった。あの頃は、ちゃんとインスタントコーヒーをスプーンで測って淹れていた。普通の時はスプーンに三杯。残業が続いている時はその倍くら…

本を読む時間と集中力を取り戻したい

最近、「文章を書く人にはインプットが大事」という記事を読んだ。それは本当にそうで、やるべきだと思っている。けれど、高校生の頃と今を比べると、読書量は30分の1くらいになってしまっていると感じる。 読書には時間と心の余裕が必要 きっと過去には本を…

評価されることは、怖い

今年は勝負の一年にしたい。そういう想いが強まっている。 この半年くらいで本当に色々なことがあって、いいことも悪いことも、当たるかわからない星占いさえも、全てが一つの道を指し示しているように感じてしまっている。 オリジナルの小説を作って、章に…

私にとっての海は「非日常」だ

小さい頃、夏は父母の車に乗ってよく海に行っていた。一度だけ、雨が重なってしまったことがあったのをよく覚えている。その日私は、海の家で荒れる海の絵を描いた。絵を描くのは嫌いではなかったから、悪い思い出ではない。でも、なんだか地味な色の絵にな…

おねえさんのまぶた。

お会計の間中、お姉さんのコーラルピンクに彩られたまぶたを、しげしげと見つめていた。どうしたらこんなふうに綺麗に色が載るのか、不思議だった。 化粧はあまり得意ではない。 昔から、自分は化粧をしているつもりでも、すっぴんのように見られる事が多か…

はじめて同人誌(二次創作)作ってイベント出てみた体験記②

初めて同人イベント出ることにしてとりあえず原稿を用意した前記事の続きです! 同人誌作りの過程:クリスタで扉とか奥付とか作る 表紙絵を描いてくれたパートナーが、絵描きなのでとりあえずクリスタは持っていた。最初縦式だけで本分ページ後書きまで全部…

はじめて同人誌(二次創作)作ってイベント出てみた体験記①

超久しぶりのnoteがこれかと思うと面白過ぎるけど、しばらくいろいろあっておやすみしていたnoteを再開しようかなと思っている。小説置き場は引き続き支部のほうにして、こちらは日記やエッセイの練習などに使う予定。 これまで読んでくださっていた方、また…

短編小説:山辺さん

いらんと言ったのに母に持たされたのだと仏頂面でフルーツ籠を差し出してきた吉岡真帆を前に、私はひとしきり笑った。退院祝いにフルーツ籠だなんて昭和かよ、と。私のお見舞いに行くと前日に話したら、近くに住む母親が朝七時に訪ねてきてフルーツ籠を置い…

自分で自分を自由にする

初めて自分で「こういう色にしてみたいんですけど」と言って髪を染めた。とても気に入っていて髪を乾かしたり梳かしたりするたびにニヤニヤしてしまう。 髪色を気にするようになったのは、応援するアイドルができてからだ。私が応援しているハロプロの子たち…

短編小説:用水路の守護霊

恋人が死んだ。ちょうど一年前の、夏の日だった。 格子の向こうでは一周忌の法要が始まっている。蝉の声と読経の声が重なる。どうやら近くの木にとまっているらしい。 首筋を汗が滑り落ちる感触があった。格子の向こうには黒い背中の群れが神妙に頭を垂れて…

途方に暮れる連休

私の中にじわじわと広がっていったのは怒りだった。でも私はその怒りをなるべく外に出さないように胸の中にしまって微笑んだ。 これは研修だから。お互いの成長のために取り入れられた仕組みだから。 そう言い聞かせる。 講師は、弱さをさらけ出すことは辛い…

連休の反省

いつも連休が終わりかける頃に反省する。「なんでこれをもっと早くやり始めておかなかったんだろう」と。この三連休も例に漏れない。 でも、思うんだけど。連休前というのは大抵疲れ切っている。連休前はどうしたって仕事が詰まるし。 だから、しょうがない…

猫を眺めながら仕事

近頃うちのなかなか慣れない猫が、夕方のご飯を食べ終わると同じ空間にいてくれる。わたしが仕事をしているリビングの大きなソファーから少し離れた窓辺に置いてある、緑色の一人がけのソファーに座って、彼は少しの間外を見ていたり、じっと目を瞑っていた…

集中してたくさん読む楽しさを、再び

日本ホラー小説賞の受賞作を中心にホラー小説を毎日読んでいる。同じジャンルのものを、たくさん、一気に、読むことって本当に久しぶりだ。 高校生の頃、ミステリにハマった。恩田陸、伊坂幸太郎、京極夏彦、綾辻行人、宮部みゆき、島田荘司。そのほか覚えて…

すべてにおいてツイてない時

びっくりするほどツイていない。今日は仕事中にパソコンがいうことをきかなくなり、唐突に猫を監視しているWEBカメラが切れた。Wi-Fiを再起動したり、PCの製造元に電話したりして少しは改善したが、イライラするような状況はあまりかわらなかった。こういう…

今年初めての日傘をさして

8月に入ってから日差しが夏を高らかに宣言している。日差しがない梅雨の間ははやく梅雨明けろと思っていたのに、あけたらあけたで早々に体調を崩した。念のため医者に行く前、パートナーから「私の使っていいから日傘差していきなよ」と言われた。暑いと言っ…

パワーの配分と、読んだ本の文体

今日は朝から夕方にかけて2冊の本を読んだ。そして合間にぐっちゃぐちゃだった部屋を片付けた。その「ぐっちゃぐちゃ」部分には洗いたいけれど梅雨のせいで洗えていなかったシーツや、先週午前だけ着たけれど気温が合わなくて着替えて、そのまま洗い忘れて…

土曜日ってなんて楽しいんだろう

「お休みの日ってなんて楽しいんだろう」とパートナーが言っていた。本当に休日が楽しい、と私も思った。とりわけ土曜日は楽しい。明日も休みだというウキウキ感がある。 人によってこの楽しさは全く違うようだ。流行病が蔓延しているので「どこにも出かけら…

パッタイと自由(短編小説)

いつも店でばかり食べていたパッタイが思いのほか楽に作れることに驚いた。なにせフライパン一つで完結してしまう。 少なめのお湯を沸騰させて麺を入れる。水がほとんどなくなった頃に海老を投入する。炒めるうちに海老はじわじわと桜色に染まっていく。ある…

同僚との別れ

一人、同僚が去っていった。好きな同僚だった。でも案外、悲しいとか寂しいといった感情がわかない。つながっている安心感があるからかもしれないし、苦楽をともにはしたけれどその時間が短かったせいかもしれない。 そんなことを思いながら、労働生産性につ…