言いにくいことでも言わねばならない時がある。相手の表情が見られない方がよい時もある。だから髪を伸ばしておいてよかった。
しばらくの間前髪をあげるスタイルでいたのは、戦うためだった。気持ちが折れないように。しばらくそうしていたらいつのまにかワンレングスと言っていいくらいの長さになっていた。
今日、祝日明けの金曜日。もう戦わなくてもよくなったので髪の毛は下ろしていった。ふわふわの癖毛に顔まわりを囲まれたら、自然と気持ちも柔らかくなった。
言いにくいことを朝一番で言った。相手は言葉が出ないみたいだった。ごめんなさいと思った。次にそれを伝えた人も、言葉を失っていた。風で髪が眼鏡の縁にかかって、表情を隠してくれてよかったと思った。微笑みで防御しているつもりだったけど、実際のところ自分がどんな顔をしているか想像もつかなかったしコントロールできなかった。
せめて、良い別れになるといいな。
明後日、わたしは髪を切る。多分バッサリと。