まゆびらき日記

虚実ないまぜの日記と小説。

集中してたくさん読む楽しさを、再び

日本ホラー小説賞の受賞作を中心にホラー小説を毎日読んでいる。同じジャンルのものを、たくさん、一気に、読むことって本当に久しぶりだ。

高校生の頃、ミステリにハマった。恩田陸伊坂幸太郎京極夏彦綾辻行人宮部みゆき島田荘司。そのほか覚えていないくらいたくさんのいろんなミステリを読んだ。今思えば、小学生の時にシャーロック・ホームズと、アルセーヌ・ルパンのシリーズを図書室で貪り読んだ、あの時がミステリにハマった本当に最初のタイミングだったのかも。でも、その後しばらくはライトノベルの世界にどっぷり浸かってしまったので、すぐにいろいろな作家のミステリを読むようにはならなかった。

その頃、少し田舎から、都心の学校に1時間半くらいかけて通っていた。駅前にビル一棟丸々本で埋め尽くされた、夢のような書店があった。通学途中に、小さめの書店もいくつもあった。私は毎月、月が変わると、放課後そこで1時間か2時間を過ごして真剣に本を吟味し、何冊かを買って帰った。高校生のお小遣い程度なので、文庫しか買えなかったけれど、本当にそれが楽しかった。

浪人生か大学生のころだったか。自分が女の人を好きになる傾向が変わらないことで、家族の期待を裏切ることになるのではないかと悩んだ。おんな、とか、おとこ、ということが全くわからなくなった。それで今でいうLGBTについてほんの少しでも記載のある本を探して貪り読んだ。そういう本は大抵高くて買えない。そして買って帰ろうものなら両親にバレるかもしれない。だから、立ち読みや、図書館の中での読書を通じて、私は同性愛が決して罪でもおかしなことでもなく、学生時代の一過性の気持ちでもないということの証拠を集めて回った。

そうするうちに、もしかしたら「女性学」みたいなジャンルがあるのではと思い立ち、探していろいろ読むうちにフェミニズムに触れた。一度読んだだけでは全くわからなかったけれど、脳を揺さぶるような衝撃をうけた。これを、知りたい。ちゃんと理解したい。その一心で、上野千鶴子先生の本や信田さよ子先生の本を買いあさり、ドッグイヤーをしたり線を引いたりしながら、何度も何度も読んだ。その本をきちんと理解できるようになる頃には、女らしさや男らしさというものが、社会によって作られたものであること、決して異性に惹かれることが当たり前ではなく、私の気持ちには名前がついているのだということ、結婚できず子供を産めないことが親不孝とは限らず、自分だけの幸せを探してもいいのだということが理解できるようになっていた。

そうやって、一つのジャンルに没頭して読む経験は、幸せなことだった。脳が沸き立つような、ワクワク感と幸福を感じた。社会人になってしばらくの間は、そこそこ大変な道を歩いてきたので、本をあまり読まなくなってしまった。それで、あの時のような感じを味わえず、本を読めなくなったことを、何かを失ってしまったかのように寂しく感じていた。

今、少し余裕ができてきて、小野不由美作品群との出会いと、友人とホラー同人誌を作ろう!と約束したことがきっかけで、こうしてたくさんの小説をまた一気に読むことができている。それで、自分が好きな作品の傾向はこうだなとか、文体が本当に人によって違うけれど自分はどうなりたいのかなとか、同じ「ホラー」と冠されているものでも、幽霊系・妖怪系・人間の怖さ系、のように出てくるものの差による分類と、耽美系・グロ系・ゾッとする系、といった怖さの傾向の分類ができそうだなとか。そんなことを考えている時間が純粋に楽しい。

次は何を読もうかなあ。