まゆびらき日記

虚実ないまぜの日記と小説。

2020-08-01から1ヶ月間の記事一覧

短編小説:用水路の守護霊

恋人が死んだ。ちょうど一年前の、夏の日だった。 格子の向こうでは一周忌の法要が始まっている。蝉の声と読経の声が重なる。どうやら近くの木にとまっているらしい。 首筋を汗が滑り落ちる感触があった。格子の向こうには黒い背中の群れが神妙に頭を垂れて…

途方に暮れる連休

私の中にじわじわと広がっていったのは怒りだった。でも私はその怒りをなるべく外に出さないように胸の中にしまって微笑んだ。 これは研修だから。お互いの成長のために取り入れられた仕組みだから。 そう言い聞かせる。 講師は、弱さをさらけ出すことは辛い…

連休の反省

いつも連休が終わりかける頃に反省する。「なんでこれをもっと早くやり始めておかなかったんだろう」と。この三連休も例に漏れない。 でも、思うんだけど。連休前というのは大抵疲れ切っている。連休前はどうしたって仕事が詰まるし。 だから、しょうがない…

猫を眺めながら仕事

近頃うちのなかなか慣れない猫が、夕方のご飯を食べ終わると同じ空間にいてくれる。わたしが仕事をしているリビングの大きなソファーから少し離れた窓辺に置いてある、緑色の一人がけのソファーに座って、彼は少しの間外を見ていたり、じっと目を瞑っていた…

集中してたくさん読む楽しさを、再び

日本ホラー小説賞の受賞作を中心にホラー小説を毎日読んでいる。同じジャンルのものを、たくさん、一気に、読むことって本当に久しぶりだ。 高校生の頃、ミステリにハマった。恩田陸、伊坂幸太郎、京極夏彦、綾辻行人、宮部みゆき、島田荘司。そのほか覚えて…

すべてにおいてツイてない時

びっくりするほどツイていない。今日は仕事中にパソコンがいうことをきかなくなり、唐突に猫を監視しているWEBカメラが切れた。Wi-Fiを再起動したり、PCの製造元に電話したりして少しは改善したが、イライラするような状況はあまりかわらなかった。こういう…

今年初めての日傘をさして

8月に入ってから日差しが夏を高らかに宣言している。日差しがない梅雨の間ははやく梅雨明けろと思っていたのに、あけたらあけたで早々に体調を崩した。念のため医者に行く前、パートナーから「私の使っていいから日傘差していきなよ」と言われた。暑いと言っ…

パワーの配分と、読んだ本の文体

今日は朝から夕方にかけて2冊の本を読んだ。そして合間にぐっちゃぐちゃだった部屋を片付けた。その「ぐっちゃぐちゃ」部分には洗いたいけれど梅雨のせいで洗えていなかったシーツや、先週午前だけ着たけれど気温が合わなくて着替えて、そのまま洗い忘れて…

土曜日ってなんて楽しいんだろう

「お休みの日ってなんて楽しいんだろう」とパートナーが言っていた。本当に休日が楽しい、と私も思った。とりわけ土曜日は楽しい。明日も休みだというウキウキ感がある。 人によってこの楽しさは全く違うようだ。流行病が蔓延しているので「どこにも出かけら…

パッタイと自由(短編小説)

いつも店でばかり食べていたパッタイが思いのほか楽に作れることに驚いた。なにせフライパン一つで完結してしまう。 少なめのお湯を沸騰させて麺を入れる。水がほとんどなくなった頃に海老を投入する。炒めるうちに海老はじわじわと桜色に染まっていく。ある…