まゆびらき日記

虚実ないまぜの日記と小説。

猫を眺めながら仕事

近頃うちのなかなか慣れない猫が、夕方のご飯を食べ終わると同じ空間にいてくれる。わたしが仕事をしているリビングの大きなソファーから少し離れた窓辺に置いてある、緑色の一人がけのソファーに座って、彼は少しの間外を見ていたり、じっと目を瞑っていたりする。

緑のソファーは元々私の部屋にあったもので、本をゆっくり読むために買ったものだった。今やもうほとんど彼のものになっている。真っ白い彼のお腹の毛がたくさんついていて、コロコロで綺麗にしてからでないと座れない。でもいいのだ。一緒の空間にいてくれるなら。仕事をしながら、少し目線をずらすと彼の柔らかそうな毛並みが見える。時々体勢を変えている。外の鳥に対してクラッキングしている音がする。そういうのを感じられるのが、幸せなのだから。


少し前に内田百閒の「ノラや」を買った。百閒先生が夜中仕事をしているとノラは窓のところに来て開けてくれというのだという。それで百閒先生はノラのために扉を開けにいく。「ノラ」がある日帰ってこなくなり、百閒先生はかなり長い間泣き暮らす。仕事も手につかなくなる。その気持ちが、とてもよくわかる。わたしもきっと、彼が突然いなくなって、仕事中ふといつも座っていたソファーが目に入ったりしたら、絶対に泣いてしまう。


在宅勤務のできないパートナーはわたしが仕事中たまにこうして猫を眺めながら仕事をしているのが羨ましいらしい。でも、彼女は最近毎晩、彼のお気に入りのおもちゃでとても近い距離にまで誘い出し、遊んでもらっている。いいじゃないか、それはそれで。

少し前までは、わたしが遊び係、彼女がご飯係だったのに、最近はすっかり逆転している。いろんな役割をこなしながら、二人とも、彼との関係性を作っていっている。なかなか慣れない猫だけれど、少しずつ慣れてくるのが楽しくて、嬉しい。飼い始めたばかりの頃は常に物陰に隠れていないといられない子だったから、もどかしいやら心配やらで「本当に私たちが飼い主で良かったのかな」と思ったりもしたけれど。その頃から比べたら格段に距離が近づいた。

そろそろ、わたしが仕事をしていても、近くで寝入ってくれるようになったら嬉しいし、少しくらい撫でられるようになったらいいな。