まゆびらき日記

虚実ないまぜの日記と小説。

2020-01-01から1年間の記事一覧

短編小説:山辺さん

いらんと言ったのに母に持たされたのだと仏頂面でフルーツ籠を差し出してきた吉岡真帆を前に、私はひとしきり笑った。退院祝いにフルーツ籠だなんて昭和かよ、と。私のお見舞いに行くと前日に話したら、近くに住む母親が朝七時に訪ねてきてフルーツ籠を置い…

自分で自分を自由にする

初めて自分で「こういう色にしてみたいんですけど」と言って髪を染めた。とても気に入っていて髪を乾かしたり梳かしたりするたびにニヤニヤしてしまう。 髪色を気にするようになったのは、応援するアイドルができてからだ。私が応援しているハロプロの子たち…

短編小説:用水路の守護霊

恋人が死んだ。ちょうど一年前の、夏の日だった。 格子の向こうでは一周忌の法要が始まっている。蝉の声と読経の声が重なる。どうやら近くの木にとまっているらしい。 首筋を汗が滑り落ちる感触があった。格子の向こうには黒い背中の群れが神妙に頭を垂れて…

途方に暮れる連休

私の中にじわじわと広がっていったのは怒りだった。でも私はその怒りをなるべく外に出さないように胸の中にしまって微笑んだ。 これは研修だから。お互いの成長のために取り入れられた仕組みだから。 そう言い聞かせる。 講師は、弱さをさらけ出すことは辛い…

連休の反省

いつも連休が終わりかける頃に反省する。「なんでこれをもっと早くやり始めておかなかったんだろう」と。この三連休も例に漏れない。 でも、思うんだけど。連休前というのは大抵疲れ切っている。連休前はどうしたって仕事が詰まるし。 だから、しょうがない…

猫を眺めながら仕事

近頃うちのなかなか慣れない猫が、夕方のご飯を食べ終わると同じ空間にいてくれる。わたしが仕事をしているリビングの大きなソファーから少し離れた窓辺に置いてある、緑色の一人がけのソファーに座って、彼は少しの間外を見ていたり、じっと目を瞑っていた…

集中してたくさん読む楽しさを、再び

日本ホラー小説賞の受賞作を中心にホラー小説を毎日読んでいる。同じジャンルのものを、たくさん、一気に、読むことって本当に久しぶりだ。 高校生の頃、ミステリにハマった。恩田陸、伊坂幸太郎、京極夏彦、綾辻行人、宮部みゆき、島田荘司。そのほか覚えて…

すべてにおいてツイてない時

びっくりするほどツイていない。今日は仕事中にパソコンがいうことをきかなくなり、唐突に猫を監視しているWEBカメラが切れた。Wi-Fiを再起動したり、PCの製造元に電話したりして少しは改善したが、イライラするような状況はあまりかわらなかった。こういう…

今年初めての日傘をさして

8月に入ってから日差しが夏を高らかに宣言している。日差しがない梅雨の間ははやく梅雨明けろと思っていたのに、あけたらあけたで早々に体調を崩した。念のため医者に行く前、パートナーから「私の使っていいから日傘差していきなよ」と言われた。暑いと言っ…

パワーの配分と、読んだ本の文体

今日は朝から夕方にかけて2冊の本を読んだ。そして合間にぐっちゃぐちゃだった部屋を片付けた。その「ぐっちゃぐちゃ」部分には洗いたいけれど梅雨のせいで洗えていなかったシーツや、先週午前だけ着たけれど気温が合わなくて着替えて、そのまま洗い忘れて…

土曜日ってなんて楽しいんだろう

「お休みの日ってなんて楽しいんだろう」とパートナーが言っていた。本当に休日が楽しい、と私も思った。とりわけ土曜日は楽しい。明日も休みだというウキウキ感がある。 人によってこの楽しさは全く違うようだ。流行病が蔓延しているので「どこにも出かけら…

パッタイと自由(短編小説)

いつも店でばかり食べていたパッタイが思いのほか楽に作れることに驚いた。なにせフライパン一つで完結してしまう。 少なめのお湯を沸騰させて麺を入れる。水がほとんどなくなった頃に海老を投入する。炒めるうちに海老はじわじわと桜色に染まっていく。ある…

同僚との別れ

一人、同僚が去っていった。好きな同僚だった。でも案外、悲しいとか寂しいといった感情がわかない。つながっている安心感があるからかもしれないし、苦楽をともにはしたけれどその時間が短かったせいかもしれない。 そんなことを思いながら、労働生産性につ…

お刺身に秘められた回復の力

仕事を終えたあと床に転がってスマホを見ていたらいつのまにかパートナーが帰ってくる時間だった。ごはん、作ろうと思っていたのに。彼女の放った「外食しちゃう?」の言葉に私は飛びついた。節約しなきゃとか、感染が心配とか、そういう言葉は瞬時にどこか…

チーズケーキとホラー小説

今日は少しは本を読む時間が取れた。怖いぞと聞いていた本で、最初の2ページで確かに怖くなってしまい、ちょっと夜は読めない、と思っていた本。でも、読み進めていったら不気味ではあったし仄暗い怖さは感じたけれど思ったほどではなかった。おどかすよう…

ホラー小説を読むタイミング

ここ数日ホラー小説を読むタイミングをはかりすぎて気になっているのに読めずにいる。ホラーを書いてみたくて、図書館で沢山借りてきた。リビングの片隅に積んである。でも、手が出せない。 なぜかというと、怖いから。ホラーなのだから怖いのは当たり前なの…

飼い猫に翻弄される

月曜日なので比較的元気に仕事をした。連休明けは気持ちが落ち込んで体をひきずるようにして出勤するということも過去には多かったのだけど、転職してからは「しょうがないな〜休んだから体力的には元気だし、やるか〜」という感じで働けている。むしろ水曜…

note再開と4連休の過ごし方

半年以上放っておいていたnoteとTwitterのこのアカウントですが、戻ってくることにしました。緩く日記を書いたり、過去創作したものをちょっとずつ上げていきます。改めて、よろしくお願いします。 もう7月下旬なのにずっとぐずぐず雨が降っている。この4連…