まゆびらき日記

虚実ないまぜの日記と小説。

途方に暮れる連休

私の中にじわじわと広がっていったのは怒りだった。でも私はその怒りをなるべく外に出さないように胸の中にしまって微笑んだ。

これは研修だから。お互いの成長のために取り入れられた仕組みだから。

そう言い聞かせる。

講師は、弱さをさらけ出すことは辛いことだけれど、それをお互いに見せ合い、固定観念となっているものを指摘し合うことで成長できるのだと説いた。

また、怒りが湧いた。何故そんなことをしなくてはならないんだろう。痛みを伴うものを人に強いるのだろう。……適当にやったらいい、こんなの。

お互いの目標や変わりたいと思っているところについて語り合った。参加者は皆、真剣で前向きな悩みや、仕事に対する想いを語った。矛盾する行動を取ってしまう苦しい心のうちや、自分を恥じる気持ちを語った。心の奥底に根強くある固定観念を問いを重ねながら探った。

私の番が回ってきた。

でも今、仕事上での目標が、どれだけ考えても思いつかなかった。与えられたものはもちろんやる。けれど、自分がよりよくなるためや、組織に貢献するための目標と言われると、表面的なものしか出てこない。

私は、これまでそういうものを考えてトライしていくのが得意なはずだった。いつも自分を変えようとしていた。毎日少しでも、よりよくなろうと。野心的ですらあった。何故か今、そういうものを考えるのがとても苦しい。

内省や振り返りも、大好きで得意なはずだったのに。いろんな角度でワークをしながら問いを受けて、「……わからないです」「……なんでなんですかね」「いやー……思いつかないです」そんなことをのらくらと言いながら曖昧な笑みで誤魔化すことしかできなかった。

そうするうちにじわりと涙が滲んだ。苦しかった。

何が今、自分に起こっているのか、わからないのが苦しい。

「今とても疲れて、自信をなくしているんだね」

優しい上司はそう言ってくれた。

でも私は好きだった会社に入ってやりたい仕事をして、職場環境もよくて幸せなはずで。お金の問題はあったけど副業をするようになって少しはマシになったし。もしかしたら今年昇給もするかもしれないし。

私は怖かった。こんなに良い職場にいたって、たった一年で気持ちが萎えて、こんなに疲れ切ってしまうのならば、どこに行ったって結局私は長続きしないのではないか。もう転がり落ちるばかりなのではないか。疲れてる、って、なんで?一体いつ、その疲れはなくなるの?どうしたら?

職種的に、向いていないのかもしれないとか、いや今はリモートワークだし会社も景気がいいとは言えない状況だから負荷がかかってるだけだよとか、副業や小説書きもはじめたから単純にキャパオーバーなんじゃないかとか、色々考えてみはする。

言行一致してないことで自分で自分を追い詰めてるのが原因のような気もしている。入社時に口で言ってたことを思うようにやれていないこととか。人を呪わば穴二つ、ではないけれど、人の悪口を言ったけれど自分も同じような行動をしてしまっていることが気になっているのかも、とか。

そういうのを解きほぐして、疲れやモチベーションダウンの原因や、何故内省がこんなに苦しくなってしまったのか、どうやってこれからの数年を過ごしていくべきなのか……そういうのを考えていかなければと、思う。思うけれど、考えようとすると頭がフリーズする。パートナーにすら、うまく喋れない。口が止まる。

もう回復するまで寝たり運動したり本を読んだり、やり過ごすしかないのかもしれない。そう思いながら始まったばかりの連休をひたすらごろごろしながら過ごしている。