まゆびらき日記

虚実ないまぜの日記と小説。

4月17日 好かれていない人

すごく好きな先輩がいる。その先輩は人気がない。シンパは多分私だけ。その先輩に憧れていると言うとみんな意味ありげに「へえ」と言う。

今日、その先輩を揶揄するようなことを言う人がいた。少し腹が立った。でも一方で、確かに扱いにくいと思われがちな人だよなとも思った。言い方が少し迂遠なところがある。そして、細部まで全て検討しないと気が済まないタチだ。

それでも私がその人を好きな理由は、一つには個人的に庇ってもらったり手伝ってもらった経験があるからだ。本当に面倒見がいいし根気強い人だと思う。そして妥協しない。理想とするところに至るまで辛抱強く「そうじゃない」と言う。私はその質へのこだわりについていきたいと思っていたから、彼に指摘されることは苦ではなかった。もう一つは、全体にとって必要だと思うからだ。彼のように耳が痛いこと、面倒でも検討しておいた方がいいことを言ってくれる人がいると、何か起こった時の対応スピードが違う。転ばぬ先の杖にもなる。

だから私は、彼を嫌いな人の発言を聞くとき、なるべく静かに穏やかに、「でもこんな一面もあるよ」と伝えるようにしている。もちろん、相手が批判する場面に合うような事例を引っ張りだして。人のいいところやそれに関連するエピソードを見つけ出すのは得意だ。悪口も得意だけど。

言ったってすぐにはわからない。私がそういうことを言うと大抵びっくりしたような顔をされる。彼が嫌な奴だという思い込みがあるからだろう。私はそういう人の顔を、いずれあの人がこの職場を去る日が来るとして、その時にやっと彼の存在の大きさに気付くんだろうなと思いながら冷静に観察している。

彼は嫌われても気づいていないのか、平気そうな顔をしている。もしかしたら余計なお節介かもしれない。

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